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Day1「はじまり」
豊かな自然が広がる大地に、
山よりもおおきな一本の樹があった。
そんなこと、まだ誰も知らない。
名前?樹齢?
そんなこと、まだ誰にもわからない。
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Day93「ある朝、一人目の訪問者」
人類で初めてその樹と出会ったのは、
一人の旅人だった。
朝日に照らされて輝く大樹の美しさに圧倒され、
旅人は涙を流していた。
たった一つの出会いが
人生を明るく照らすことがある。
今日のこの出会いが旅人にとって
そんな光になったのかもしれないね。
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Day93-2「ここに決ーめた」
旅人はしばらくの間その樹を眺めていた。
時間と共に葉っぱの色を変えながら
さわさわ揺れる樹も
旅人との出会いを喜んでいるようだった。
日が暮れはじめる頃、
旅人はテントを張った。
どうやら今夜はここで眠りにつくようだ。
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Day99「いつかのために種を蒔く」
旅人の荷物の中には、
旅の途中拾い集めた
たくさんの花の種があった。
それをここに蒔くことにしたらしい。
「そんなに大きくて美しい君でも
ひとりぼっちは寂しいだろう?
花咲く頃にはきっと君はひとりぼっちじゃないからね。」
大きな樹に向かって
そんなことを呟いていた。
Day105「星空につられて一緒に光る樹」
人里から遠く離れたこの場所では
晴れた夜に数え切れないほどの星が輝き
山々を白く照らす。
あまりにも綺麗な星空につられて
大きな樹も一緒に光っていた。
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Day117「雨、ときどき、蛍」
粒の小さな優しい雨が降ってきた。
雨が苦手なはずの蛍も
この雨の中ではふわふわと
飛んでいる。
雨粒に蛍の光が溶けて
きらきらと光に包まれる
不思議で綺麗な夜だった。
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Day129「特等席で過ごす穏やかな時間」
旅人は、手作りのベンチに腰かけて
温かいコーヒーを飲んでいた。
「もしもまだ君に名前がないのなら、
春夏秋冬を一つに混ぜたような君に
ぴったりの名前をつけてもいいかい?」
そう言うと
少しずつ花開いてきた
花畑のネームプレートに
何か書き足していた。
ネームプレートには
「四樹と花畑」と書かれていた。
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Day145「旅人が去った後、現れた白くて大きなナニカ」
それからしばらくして
旅人はこの地を去っていった。
旅人が去った後、時々、四樹のまわりに
白くて大きなナニカが現れるようになった。
動物のような
怪物のような
妖精のような
不思議なその何者かは
旅人の代わりに
花畑に水やりをしているようだった。
旅人が残していった花々は
今日もきらきらと揺れている
![](https://poet-uta.com/wp-content/uploads/2021/08/IMG_2749-580x674.jpeg)
Day485「ある朝、二人目の訪問者」
旅人の花畑が一度枯れて
もう一度満開に咲いた頃、
久しぶりに人が訪ねてきた。
あの旅人以来、2人目の訪問者だ。
赤い服の女性は
小さなカメラのようなもので
写真を撮っていた。
![](https://poet-uta.com/wp-content/uploads/2021/08/IMG_2748-580x674.jpeg)
Day497「三人目と、#穴場発見」
この前の赤い服の女性が
誰かを連れてきたようだ。
今度は二人で
記念撮影をしているね。
あの旅人の特等席は
この二人にとっても
特等席になったみたいだね。
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Day522「拡散」
人から人へ情報が伝わるのは
あっという間だね。
ついこの前まで誰も知らなかった
「四樹」の周りには、
毎日毎日、人が溢れてる。
旅人が思い描いていたのはこの景色かな?
どうだろうね。
ただ、
そよ風や葉の揺れる音よりも
人々の声や足音の方が大きくなってしまったのは
少し残念だね。
Day555「プロポーズと祝福の風」
訪れる人の数だけ
この場所に思い出が作られていく。
たのしい思い出も
かなしい思い出も。
今日はまた一つ
幸せな思い出が作られたよ。
四樹と花畑は
祝福の風を贈っていた。
幸せそうな人たちを見ると
こっちまで幸せな気持ちになるね。
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Day567「スーツの人たちと新都市開発計画」
何やら不穏な雰囲気も漂い始めた。
スーツを着た人たちが資料を持って
何か話し合っている。
何が始まるんだろう?
いつだって新しいことの始まりは
少し不安だね。
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Day695「問われるモラル」
光と影はいつもすぐそばにある。
全員が光しか見ようとしない世界になったとしても
その影の中で一生懸命に生きている人がいることを
忘れちゃいけないね。
目の前に広がる景色が
少し濁って見えるようになったのは
人々が
いろんな色を重ねすぎたから
いろんな色を求めすぎたから
なのかもしれないね。
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Day742「消えゆく思い出の場所」
創り出すことよりも
残していくことよりも
壊すことの方が遥かに簡単で
悲しくなるね。
「大切にする」という言葉は美しいけど
都合の良い言葉でもあるような気がする
それぞれが大切なものだけを守ろうとすると
結局全て壊れていく
思い出も
自然も
仕事も
お金も
見栄も
大切にしたいものも
大切にする方法もみんな違うからね。
Day756「あの美しい自然はどこにいった!?」
あの時の旅人が帰ってきた。
旅人を待っていたのは
掘り起こされた大地と
苦しそうな四樹だった。
「あの美しい自然はどこに行った!?」
旅人は叫んだ。
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Day797「小さな声を上げる一人と止まらない開発」
旅人は心の中で自分を責めていた。
あの時花の種を蒔いたから
あの時名前をつけたから
自分がこの自然に手を加えなかったら
こんなことにはならなかったかもしれない
ごめんごめんと泣きながら
必死に工事を止めようとしていた
でも、
止めることはできなかった。
自分の選択や行動が
思い描いた景色とは違う未来を
招いてしまう時がある。
未来は誰にも予知できないから。
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Day800「一人の願いは大粒の雨になって」
いつまでも滴る旅人の涙を隠すように
大粒の雨が降ってきた。
「この雨が
なにもかも洗い流してくれれば
いいのになぁ。」
旅人は呟きながら
雨と一緒に泣いていた。
綺麗な綺麗な
雨だった。
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Day890「止まらない雨、止まる開発」
どんよりとした曇りの日も
青く晴れた日も
その不思議な雨は
降り止まなかった。
いつまでも休むことなく
降り続く雨は
次第に大地を覆っていった。
Day1029「湖と900日ぶりの虹」
降り続いた雨が止み、
900日ぶりに虹が架かった日。
そこはまるで湖のようになっていた。
たくさんの悲しみや思い出を含んだこの雨が
大地に染み込んだ時、
いつか何かに変わるのかな。
きっと人間に
予知能力がないのは
失敗を経験する為で、
その代わりに
記憶力があるのは
同じ失敗を繰り返さない為
なんだろうね。
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Day2101「再生」
月日が流れ、
雨水が染み込んだ大地には
豊かな草木が茂っていた。
「全てが終わった」と思ったあとにも
作られていく日々がある。
より良い未来の
「再生と創造」のはじまりだ。
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Day3210「春」
春、
薄ピンクと白の桜
ふわふわ飛んでいくタンポポの綿毛
爽やかな春風
芽生える木の芽
木の枝を登るてんとう虫
空を泳ぐ鯉のぼり
羊のようなポコポコした雲
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Day4030「夏」
夏、
どこまでも青い空と海
綿菓子みたいな入道雲
眩しいほどのひまわり畑
傘の内側で聴いた雨の音
合唱する蝉の声
ジリジリと肌をさす陽射し
落ちないように優しくつまんだ線香花火
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Day5130「秋」
秋、
川沿いに咲くコスモスの花
山を赤や黄に染める葉っぱ
しとしと降る秋雨
魔法のような夕焼け
拾いながら歩いたどんぐり
癒しのBGMを奏でる虫の声
団子とうさぎが良く似合う満月
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Day 5234「冬」
冬、
胸いっぱいに吸い込む冷たい空気
手を温める白い吐息
さらさら降る雪
ふわふわ降る雪
みんなで作った雪だるまの家族
まるまる太った小鳥
澄んだ夜空で鮮明に光る星
Day6450「美しすぎて眠りたくない夜に」
心穏やかでいられることは
それだけで幸せなことだ
何もない日があってもいい
心が動かない日があってもいい
頑張らない日があってもいい
早く寝てもいい
夜更かししてもいい
ただただ夜の空気で肺を満たす
そんな日があってもいい
深く呼吸さえできていれば
ただ生きてさえいれば。
眠るのが勿体ないほど
美しい夜にブランコの音が響いていた。
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Day 6541「透き通るほど蒼くて静かな朝に」
朝を楽しみに待つ人
朝が来るなと願う人
それぞれに同じ朝が来る
透き通るほど蒼くて静かな朝に
ギターの音色が響いた。
きっと今だけは
ここが世界で一番美しい朝だ。
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Day38487「100年後の四樹の森」
旅人は
ずっとずっと
四樹を見守っていた
四樹は
ずっとずっと
旅人を見守っていた
100年以上たった今も
きっとすぐそばで見守っている。
![](https://poet-uta.com/wp-content/uploads/2021/08/IMG_2730-scaled.jpeg)
![](https://poet-uta.com/wp-content/uploads/2021/08/IMG_2761.jpeg)
F i n .
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