Story『命につけた名前』~生まれるということは、それだけで奇跡なんだ。~

言葉を綴りながら、
あんなにも切ない気持ちになったのは初めてだった。

1年前に出逢ったある夫婦との命の話。

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それは、
2014年12月、豊前のイベントでのこと。

一組のカップルが椅子に座った。

(後に夫婦だとわかるのだけど、初見では10代後半のカップルに見えた)

「こんにちは、書きましょうか??」と尋ねた。

女性は「うんっ」と答えると、
依頼ノートに作品に入れる名前を書きはじめた。

依頼の名前は、
「颯來(そら)と真咲人(まさと)」

そのカップルの名前で書いて欲しいんだろうなと勝手に思っていたので

あれっ、二人とも男の子かな?と疑問に思いながらも、

「お兄さんとお姉さんお二人のお名前ですか??」と尋ねる。

すると、

「ううん、こども」と女性。

若く見えるけど、二人は夫婦だったんだ!とちょっとびっくりしながら

「お子さんいたんですねー!」と返すと

「いやー、颯來は子宮外妊娠で、真咲人は半年の時にだめになった」と母親。

……

母親が言った状況を一瞬では整理できなかった。

(実際のところ、衝撃すぎて細かい言葉づかいとかははっきり覚えてない)

たぶん、
「そうなんやね。辛かったね。」と咄嗟に返した。

母親の笑顔が印象的だった。

続けて、
「作品に入れたい日付とか色はありますか??」とたずねる。

作品に入れたい日付は、
二人がそれぞれ生まれる予定だった日付。

色を決めるときには、
夫婦で
「颯來は青っぽくない?真咲人は紫が好きそうやない?!」と

あたかも二人の子どもが側でベビーカーにゆられて寝ているかの様に話し合って決めていた。

こんなに若いのに2度も流産を経験するなんて…

どんな経緯でお腹の中の子どもに名前をつけたんだろう…

この作品を書いたことでこれを見るたびに辛いことを思い出させてしまうんじゃないのか…

いろんな想いが込み上げてくるなか制作に入る。

その間、母親の妹さんが近くに居てくれたので状況を詳しく聞いてみると、

お腹にいる間に名前を考えたのではなくて、
流産したあとに名前を考えてつけたのだそうだ。

驚いた。

この流産という出来事に対して
当事者である母親に対して周りの人がその話題に触れることは

よほど親密な仲の人以外

一般的にはおそらく【禁句・タブー】

理由はたぶん、
母親にツライ事を思い出させてしまうのを避けるため。

でも、この二人の両親は
生まれることなく人生を終えた小さな二つの命に名前をつけたんです。

そして、今でも家族の一員として名前を呼んであげているんです。

これってスゴいことだと思う。

同じ様な経験をして
思い出すのが辛くてその存在自体を忘れようとする人もたくさんいると思うんだけど、

この両親は、
二人の命を忘れずに共に生きていく覚悟を決めたのです。

この覚悟を持てるようになるまで、
どれだけ辛い思いをしたんだろう。

どれだけの涙を流したんだろう。

でも、その覚悟をもったことで起こることがあると思います。

周りの人たちも、
その生まれることができなかった二つの命の存在を認めてあげることができると思うんです。

そんな事を思っていると、
制作依頼を受けた自分も
思いっきり「颯來と真咲人」の存在を認めた上で言葉を綴る決意ができました。

そして、

今この天国にいる二人は両親に対してどんなメッセージを伝えたいだろうかと
イメージを膨らませながら言葉を綴りました。

だから、この作品に綴った言葉は、
詩太からのメッセージでもあり、
「颯來と真咲人」からのメッセージ。

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この素敵な笑顔の2人が
5人家族になる日が来ることを心から願ってます。

大切な事を教えてくれて
本当にありがとう。

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生まれる。

それだけで奇跡。

生まれることができなかった

命の分まで

めいっぱい

せいいっぱい

生きてやる。

2016.2/4

詩太

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ABOUTこの記事をかいた人

詩太 / u-ta

詩太(うーた) 詩人・アーティスト あとりえ~温~ 代表 1987年生まれ 北九州市在住 『詩とArtで人の心と人生(日々)を豊かにする』 『子どもを取り巻く環境の一因として子育てに貢献する』 ということを目標に、表現・活動を行っている。 また、元保育士の経験を活かし、 子どもの将来を支える幼少期の[意欲・好奇心]に火をつけるため【書×こども】という活動を行っている。 死ぬまでにどれだけの人に感動・喜び・温もりを与えられるか挑戦中。