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詩太
u-ta
「穏やかな時間」をテーマに、詩や絵や物語の創作を行う詩人・画家。

詩から始まった創作活動は、水彩画・アクリル画・デジタル画・物語の創作へと表現の幅を広げ、さまざまな手法を用いて温かな世界観の作品を創り出す現在のスタイルに至る。

創作以外にも、これまでに30回以上の個展開催、詩画集出版、ライブペイント出演、人権講演、子ども向けワークショップ開催など精力的に活動を行っている。

福岡県出身、1987年生まれ。

story『言葉の温度』

【 言 葉 の 温 度 】

「○○ちゃんは、耳がわるいんやない!聴こえにくいだけ!お母さんいじわる言わんで!」

当時まだ3歳児の男の子がお母さんに言った一言です。

保育士時代の、忘れられないエピソード。

初めて主担任をさせてもらった3歳児クラスには、
2歳児の頃に入園した先天性難聴の女の子(Aちゃん)がいました。

Aちゃんと日々一緒に過ごすうちに、
子どもたちのAちゃんに対する関わりかた
少しずつ変化があらわれてきました。

【顔をのぞきこむように視線をあわせて、口を大きくあけてゆっくりと話しかける。】

保育士の関わりを見て学んだのかもしれないけど、
毎日一緒に過ごすなかで、
まだ3歳の子どもたちが、
Aちゃんはそうやって話しかけると聞き取りやすいんだと気付き、
自然と実践できるようになっていきました。

そして、

年度も終わりに近づいてきた2月。
個人懇談会でのこと。

クラスの男の子(Bくん)のお母さんと懇談で話していて、
「Bくん、すごい優しいですよね~」と伝えたとき、
「そういえば…」と、お母さんがお家でのエピソードを教えてくれました。

お迎えの時にAちゃんの耳に補聴器がついてることに気が付いたお母さんが、
お家に帰ってから何気なくBくんに
「Aちゃんって耳がわるいとー??」とたずねたそうです。

すると、
Bくんが急に怒って
「Aちゃんは、耳がわるいんやない!聴こえにくいだけ!お母さんいじわる言わんで!」
と言ったんだそうです。

その話を聞いたとき、
ずっと伝えてきたことが子どもたちにしっかり伝わってるんだ、
ちゃんと心が育ってるんだと嬉しくなって、
涙が出そうになりました。

身体が不自由な人のことを
「耳がわるい」「目がわるい」「足がわるい」
悪気があるわけじゃなく、
何気なく言ってしまってる人も多いと思います。

確かに本人は何も「わるくない」ですよね。
ただ、「聴こえにくい」だけ。

同じことを表現している言葉だとしても
「耳がわるい」と「聴こえにくい」じゃ、
言葉の温度が違う。

相手に対しての思いやりが違う。

その事に3歳で気付けたBくんは、
きっとこの先、
障がいをもった人と出逢ったとき、
自然体で優しく接する事ができるだろう。

障がいをもった子どもと健常児を一緒に保育することを、
[統合保育]と言うのだけど、
子どもにとってはそんなむずかしい用語は関係ない。

だって、子どもたちにとっては誰でも一人の仲間であり友だち
保育士が導いていく必要もあると思うけど、
子ども同士のかかわりの中で自然と大切なことを学んでる。

ね、保育園って素敵なところでしょ??

この事があってからより一層、
相手に対しての言葉選びを考えるようになりました。
いつまでも言葉の温度を大切にしたいな。

言葉の温度

2015.6/16 詩太

言葉の温度

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