【 言 葉 の 温 度 】
「○○ちゃんは、耳がわるいんやない!聴こえにくいだけ!お母さんいじわる言わんで!」
当時まだ3歳児の男の子がお母さんに言った一言です。
保育士時代の、忘れられないエピソード。
初めて主担任をさせてもらった3歳児クラスには、
2歳児の頃に入園した先天性難聴の女の子(Aちゃん)がいました。
Aちゃんと日々一緒に過ごすうちに、
子どもたちのAちゃんに対する関わりかたに
少しずつ変化があらわれてきました。
【顔をのぞきこむように視線をあわせて、口を大きくあけてゆっくりと話しかける。】
保育士の関わりを見て学んだのかもしれないけど、
毎日一緒に過ごすなかで、
まだ3歳の子どもたちが、
Aちゃんはそうやって話しかけると聞き取りやすいんだと気付き、
自然と実践できるようになっていきました。
そして、
年度も終わりに近づいてきた2月。
個人懇談会でのこと。
クラスの男の子(Bくん)のお母さんと懇談で話していて、
「Bくん、すごい優しいですよね~」と伝えたとき、
「そういえば…」と、お母さんがお家でのエピソードを教えてくれました。
お迎えの時にAちゃんの耳に補聴器がついてることに気が付いたお母さんが、
お家に帰ってから何気なくBくんに
「Aちゃんって耳がわるいとー??」とたずねたそうです。
すると、
Bくんが急に怒って
「Aちゃんは、耳がわるいんやない!聴こえにくいだけ!お母さんいじわる言わんで!」
と言ったんだそうです。
その話を聞いたとき、
ずっと伝えてきたことが子どもたちにしっかり伝わってるんだ、
ちゃんと心が育ってるんだと嬉しくなって、
涙が出そうになりました。
身体が不自由な人のことを
「耳がわるい」「目がわるい」「足がわるい」と
悪気があるわけじゃなく、
何気なく言ってしまってる人も多いと思います。
確かに本人は何も「わるくない」ですよね。
ただ、「聴こえにくい」だけ。
同じことを表現している言葉だとしても
「耳がわるい」と「聴こえにくい」じゃ、
言葉の温度が違う。
相手に対しての思いやりが違う。
その事に3歳で気付けたBくんは、
きっとこの先、
障がいをもった人と出逢ったとき、
自然体で優しく接する事ができるだろう。
障がいをもった子どもと健常児を一緒に保育することを、
[統合保育]と言うのだけど、
子どもにとってはそんなむずかしい用語は関係ない。
だって、子どもたちにとっては誰でも一人の仲間であり友だち。
保育士が導いていく必要もあると思うけど、
子ども同士のかかわりの中で自然と大切なことを学んでる。
ね、保育園って素敵なところでしょ??
この事があってからより一層、
相手に対しての言葉選びを考えるようになりました。
いつまでも言葉の温度を大切にしたいな。
2015.6/16 詩太
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