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キムラシンゴ/shingo kimura
作家名:詩太(うーた)
詩人/アーティスト
福岡県出身、1987年生まれ。

6年間保育士として勤務後、詩人・アーティストとして独立。「穏やかな時間」をテーマに、詩や絵や言葉や架空の旅人の物語の創作・表現活動をおこなっている。活動は、アクリル画・デジタルペイント・詩・壁画などの創作、県内外での個展開催、詩集出版、題字制作、ライブペイント出演、講演、子ども向けワークショップ開催など様々。

過ぎる時、同じ場所から見た景色。|online books


Day1「はじまり」


豊かな自然が広がる大地に、
山よりもおおきな一本の樹があった。

そんなこと、まだ誰も知らない。

名前?樹齢?
そんなこと、まだ誰にもわからない。

Day93「ある朝、一人目の訪問者」


人類で初めてその樹と出会ったのは、
一人の旅人だった。

朝日に照らされて輝く大樹の美しさに圧倒され、
旅人は涙を流していた。

たった一つの出会いが
人生を明るく照らすことがある。
今日のこの出会いが旅人にとって
そんな光になったのかもしれないね。

Day93-2「ここに決ーめた」


旅人はしばらくの間その樹を眺めていた。

時間と共に葉っぱの色を変えながら
さわさわ揺れる樹も
旅人との出会いを喜んでいるようだった。

日が暮れはじめる頃、
旅人はテントを張った。

どうやら今夜はここで眠りにつくようだ。

Day99「いつかのために種を蒔く」


旅人の荷物の中には、
旅の途中拾い集めた
たくさんの花の種があった。

それをここに蒔くことにしたらしい。

「そんなに大きくて美しい君でも
ひとりぼっちは寂しいだろう?
花咲く頃にはきっと君はひとりぼっちじゃないからね。」

大きな樹に向かって
そんなことを呟いていた。

Day105「星空につられて一緒に光る樹」


人里から遠く離れたこの場所では
晴れた夜に数え切れないほどの星が輝き
山々を白く照らす。

あまりにも綺麗な星空につられて
大きな樹も一緒に光っていた。

Day117「雨、ときどき、蛍」


粒の小さな優しい雨が降ってきた。

雨が苦手なはずの蛍も
この雨の中ではふわふわと
飛んでいる。

雨粒に蛍の光が溶けて
きらきらと光に包まれる
不思議で綺麗な夜だった。

Day129「特等席で過ごす穏やかな時間」


旅人は、手作りのベンチに腰かけて
温かいコーヒーを飲んでいた。

「もしもまだ君に名前がないのなら、
春夏秋冬を一つに混ぜたような君に
ぴったりの名前をつけてもいいかい?」

そう言うと
少しずつ花開いてきた
花畑のネームプレートに
何か書き足していた。

ネームプレートには
「四樹と花畑」と書かれていた。

Day145「旅人が去った後、現れた白くて大きなナニカ」


それからしばらくして
旅人はこの地を去っていった。

旅人が去った後、時々、四樹のまわりに
白くて大きなナニカが現れるようになった。

動物のような
怪物のような
妖精のような
不思議なその何者かは
旅人の代わりに
花畑に水やりをしているようだった。

旅人が残していった花々は
今日もきらきらと揺れている

Day485「ある朝、二人目の訪問者」


旅人の花畑が一度枯れて
もう一度満開に咲いた頃、
久しぶりに人が訪ねてきた。

あの旅人以来、2人目の訪問者だ。

赤い服の女性は
小さなカメラのようなもので
写真を撮っていた。

Day497「三人目と、#穴場発見」


この前の赤い服の女性が
誰かを連れてきたようだ。

今度は二人で
記念撮影をしているね。

あの旅人の特等席は
この二人にとっても
特等席になったみたいだね。

Day522「拡散」


人から人へ情報が伝わるのは
あっという間だね。

ついこの前まで誰も知らなかった
「四樹」の周りには、
毎日毎日、人が溢れてる。

旅人が思い描いていたのはこの景色かな?
どうだろうね。

ただ、
そよ風や葉の揺れる音よりも
人々の声や足音の方が大きくなってしまったのは
少し残念だね。

Day555「プロポーズと祝福の風」


訪れる人の数だけ
この場所に思い出が作られていく。

たのしい思い出も
かなしい思い出も。

今日はまた一つ
幸せな思い出が作られたよ。

四樹と花畑は
祝福の風を贈っていた。

幸せそうな人たちを見ると
こっちまで幸せな気持ちになるね。

Day567「スーツの人たちと新都市開発計画」


何やら不穏な雰囲気も漂い始めた。

スーツを着た人たちが資料を持って
何か話し合っている。

何が始まるんだろう?

いつだって新しいことの始まりは
少し不安だね。

Day695「問われるモラル」


光と影はいつもすぐそばにある。

全員が光しか見ようとしない世界になったとしても
その影の中で一生懸命に生きている人がいることを
忘れちゃいけないね。

目の前に広がる景色が
少し濁って見えるようになったのは
人々が
いろんな色を重ねすぎたから
いろんな色を求めすぎたから
なのかもしれないね。

Day742「消えゆく思い出の場所」


創り出すことよりも
残していくことよりも
壊すことの方が遥かに簡単で
悲しくなるね。

「大切にする」という言葉は美しいけど
都合の良い言葉でもあるような気がする

それぞれが大切なものだけを守ろうとすると
結局全て壊れていく

思い出も
自然も
仕事も
お金も
見栄も

大切にしたいものも
大切にする方法もみんな違うからね。

Day756「あの美しい自然はどこにいった!?」


あの時の旅人が帰ってきた。

旅人を待っていたのは
掘り起こされた大地と
苦しそうな四樹だった。

「あの美しい自然はどこに行った!?」
旅人は叫んだ。

Day797「小さな声を上げる一人と止まらない開発」


旅人は心の中で自分を責めていた。

あの時花の種を蒔いたから
あの時名前をつけたから

自分がこの自然に手を加えなかったら
こんなことにはならなかったかもしれない

ごめんごめんと泣きながら
必死に工事を止めようとしていた

でも、
止めることはできなかった。

自分の選択や行動が
思い描いた景色とは違う未来を
招いてしまう時がある。
未来は誰にも予知できないから。

Day800「一人の願いは大粒の雨になって」


いつまでも滴る旅人の涙を隠すように
大粒の雨が降ってきた。

「この雨が
なにもかも洗い流してくれれば
いいのになぁ。」

旅人は呟きながら
雨と一緒に泣いていた。

綺麗な綺麗な
雨だった。

Day890「止まらない雨、止まる開発」


どんよりとした曇りの日も
青く晴れた日も
その不思議な雨は
降り止まなかった。

いつまでも休むことなく
降り続く雨は
次第に大地を覆っていった。

Day1029「湖と900日ぶりの虹」


降り続いた雨が止み、
900日ぶりに虹が架かった日。
そこはまるで湖のようになっていた。

たくさんの悲しみや思い出を含んだこの雨が
大地に染み込んだ時、
いつか何かに変わるのかな。

きっと人間に
予知能力がないのは
失敗を経験する為で、
その代わりに
記憶力があるのは
同じ失敗を繰り返さない為
なんだろうね。

Day2101「再生」


月日が流れ、
雨水が染み込んだ大地には
豊かな草木が茂っていた。

「全てが終わった」と思ったあとにも
作られていく日々がある。

より良い未来の
「再生と創造」のはじまりだ。

Day3210「春」


春、

薄ピンクと白の桜
ふわふわ飛んでいくタンポポの綿毛
爽やかな春風
芽生える木の芽
木の枝を登るてんとう虫
空を泳ぐ鯉のぼり
羊のようなポコポコした雲

Day4030「夏」


夏、

どこまでも青い空と海
綿菓子みたいな入道雲
眩しいほどのひまわり畑
傘の内側で聴いた雨の音
合唱する蝉の声
ジリジリと肌をさす陽射し
落ちないように優しくつまんだ線香花火

Day5130「秋」


秋、

川沿いに咲くコスモスの花
山を赤や黄に染める葉っぱ
しとしと降る秋雨
魔法のような夕焼け
拾いながら歩いたどんぐり
癒しのBGMを奏でる虫の声
団子とうさぎが良く似合う満月

Day 5234「冬」


冬、

胸いっぱいに吸い込む冷たい空気
手を温める白い吐息
さらさら降る雪
ふわふわ降る雪
みんなで作った雪だるまの家族
まるまる太った小鳥
澄んだ夜空で鮮明に光る星

Day6450「美しすぎて眠りたくない夜に」


心穏やかでいられることは
それだけで幸せなことだ

何もない日があってもいい
心が動かない日があってもいい
頑張らない日があってもいい
早く寝てもいい
夜更かししてもいい
ただただ夜の空気で肺を満たす
そんな日があってもいい

深く呼吸さえできていれば
ただ生きてさえいれば。

眠るのが勿体ないほど
美しい夜にブランコの音が響いていた。

Day 6541「透き通るほど蒼くて静かな朝に」


朝を楽しみに待つ人
朝が来るなと願う人
それぞれに同じ朝が来る

透き通るほど蒼くて静かな朝に
ギターの音色が響いた。

きっと今だけは
ここが世界で一番美しい朝だ。

Day38487「100年後の四樹の森」


旅人は
ずっとずっと
四樹を見守っていた

四樹は
ずっとずっと
旅人を見守っていた

100年以上たった今も
きっとすぐそばで見守っている。

F i n .

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