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詩太
u-ta
「穏やかな時間」をテーマに、詩や絵や物語の創作を行う詩人・画家。

詩から始まった創作活動は、水彩画・アクリル画・デジタル画・物語の創作へと表現の幅を広げ、さまざまな手法を用いて温かな世界観の作品を創り出す現在のスタイルに至る。

創作以外にも、これまでに30回以上の個展開催、詩画集出版、ライブペイント出演、人権講演、子ども向けワークショップ開催など精力的に活動を行っている。

福岡県出身、1987年生まれ。

【タウ爺の置き手紙】タウ爺がいなくなった・・・

朝起きたら、タウ爺がいなくなった・・・

 

いないんです。

どこにも。

 

 

こんな手紙を残していました。

(タウ爺からの手紙、全文)


 

うーたくんへ

 

うーたくん、
突然姿を消してわるかったね。

先に謝っておくよ。
ごめんな。

 

うーたくん、
わしが「artは身につけるもの」に込めた
本当の意味がわかるかい?

 

わしは、
中学を中退してから数十年間、
絵画の勉強をしに単身、
パリに留学してのぉ、
それなりの実績を残して
40歳のとき、
日本に帰ってきたんじゃ。

 

「やっと日本でもartで人々に貢献できる」
そう思っとった。

 

じゃが、現実は違った。

 

「art」ってきいただけで
artは難しい、
artは自分とは無縁だと
少し身構えてしまう人や
遠ざけてしまう人が
多かったんだ 。

わしの絵に目を止めてくれる人は
おらんかった。

ショックじゃった。

 

じゃあ、
人にとってartって必要ないものなのか?

そんなことない。

 

わしは逃げるように
また日本を出て、
アメリカへ渡った。

 

わしは「art」と「人」の距離を
縮めたかったんじゃ。

ずっとそんなことを考えとったけど
わしなりの方法が見つからんかった。

 

絵を描いては捨て、
路上で寝泊まりし、
ふらふらと日々を過ごしておった。
わしはこれで
終わりなんじゃろうなおもっとった。

・・・・・・

そんなある日、
ニューヨークのある公園で
一人の少年と出逢ったんじゃ。

 

その5歳くらいの少年は
大きなホットドックを持っておっての
嬉しそうに食べよった

じゃが、小石につまずいて
転んでしまってのぉ、
ホットドックのケチャップが
べったりと少年のTシャツに
ついてしまったんじゃ。

で、その少年な
泣くかと思ったら、
「Tシャツかっこよくなった」って
喜んどんじゃよ。

 

その笑顔を見たとき
ハッとひらめいたんじゃ。

着るものをartにしたら
「art」と「人」の距離が
グッと縮まるんじゃないかってな。

 

それからすぐに
洋服にペイントを始めてな
世界中を旅しながら
個展を開いたり、
出逢った人の服にペイントしたり
し続けてきたんじゃ。

 

楽しかったなぁ。

今まで見向きもしなかった人たちが
わしの絵で喜んでくれるんじゃよ。

その瞬間だけは、
「art」と「人」は一つじゃった。
それだけで
わしは幸せじゃった。

 

うーたくん、
この場所でのわしの役目は
これでおしまいじゃ。

短い間じゃったが、
君にはすべてを
見せ、伝えたつもりじゃ。

今日からは
君がこの場所で、
「art」と「人」の距離がなくなる瞬間を
作ってほしい。

よろしく頼んだよ。

わしは次の場所へ行く。
また会おう。
いつかどこかで。

 

ps.冷蔵庫にリポビタンD入れてるから飲んでね。風邪引くなよ。

2017.7.15

タウ爺

 


 

「artは身につけるもの」に込めた想いって

そういうことだったんだ。

 

・・・・・。

 

・・・・・・・・・。

 

 

これは困った!

詩展2017「artは身につけるものじゃ」が口癖のタウ爺が営む洋服屋さんなのにタウ爺不在・・・。

仕方ない!
もうこうなったら、
一人で店番するっきゃない!

タウ爺に会いたい人もいただろうけど、
「artは身につけるもの」が口癖のタウ爺が営む“予定だった”洋服屋さん
にタイトル変更だ!

アートリメイク
詩太がするしかない!

まかせとけ、タウ爺のバカヤロー!

 

 

でも、やっぱ
一言くらいお礼言わせてほしかったな・・・

タウ爺、ありがとう。

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